先生がいてくれるなら②【完】
「せんせ……」
掠れた小さな声で俺を呼ぶ。
俺は、握りしめた彼女の手を壊してしまわないように、優しく力を込めた。
「助けてくれて、ありがとう、先生……」
今にも泣き出しそうなのにそれでも微笑もうとする立花が、堪らなく愛おしい。
立花の華奢な手にそっと口づける。
「……ねぇ、先生、いま何時ですか……?」
立花の唐突の問いに、ふと部屋に駆けられた時計を見上げた。
「5時すぎだよ」
「夕方の?」
「そう」
「先生……学校に戻って下さい。明日、修学旅行でしょ……?」