先生がいてくれるなら②【完】
12月に入った。
世間ではもうすぐクリスマスらしい。
今まで一度もウキウキもワクワクもした事が無い、俺には無用だったイベント。
今年は……めちゃくちゃウキウキワクワクしてる──なんて言ったら、俺のことをそれなりによく知っている人なら『天変地異の前触れか!?』などと驚くに違いない。
俺は立花に「もうすぐクリスマスだけど、何か希望ある?」と尋ねたが、これと言って希望は無いのだと言う。
立花は「……先生もお仕事で忙しいでしょうし」なんて俺を気遣うような事まで言って。
まぁ、そう言う気遣いは嬉しいっちゃ嬉しいんだけど、やっぱり申し訳ないなと思う。
「ばーか。クリスマスまで仕事なんかしねぇよ」
──なんて言ってはみたものの、新学期の準備や、どうでも良さそうな資料の作成、報告書、……やらなきゃいけない事は山積みで。
でも、年にたった数回しか無いイベントなのに立花に寂しい思いをさせるなんて事にはしたくなくて、できる限り立花の希望を叶えてやりたいと希望を尋ねたのだが……。
結局「一緒に晩ご飯が食べたいです」としか言わない立花。
そんな立花に、俺は思わず質問せずにはいられない。
「なぁ、立花。お前さ、……我慢してないか?」