先生がいてくれるなら②【完】
俺の問いかけに、立花は首を傾げる。
質問の意味が分からない、とハッキリと顔に書いてある。
だけどそれは立花が意識していないだけで、きっとたくさん我慢してくれているはずだ。
いくら俺の学校での風貌とプライベートの風貌が違うとは言え、学校関係者に見つかるわけにはいかない。
だからデートする時だって車で遠方まで行ったりするし、行った先でもきっと心配性な立花のことだ、気が気じゃ無いに違いない。
同年代の男子とだったらしなくていい我慢を、俺と一緒だと、いっぱいさせてしまう。
放課後に一緒に下校してそのままデートしたり、なんて事は絶対に無理なわけだし……。
仕事のことだってそうだ。
俺が忙しいのを知っているから、立花はなるべく俺の自宅で過ごそうとする。
そうすれば俺の負担にならないのが分かっているから。
そこまでしてくれて、俺はもちろん嬉しいし、そんな風に俺に尽くしてくれようとする所が愛おしくて堪らないけど、やっぱり申し訳ないと思ってしまうんだ。
だからクリスマスぐらいは一緒に楽しく、カップルらしく過ごしたい、過ごさせてやりたい。
「……俺に任せてくれる?」と言うと、それでも「先生の負担にならないようにお願いしますね?」なんて言ってくれる立花。
俺は彼女の頭をポンと優しく撫でて「大丈夫」と言って微笑んで返した。