先生がいてくれるなら②【完】
きっと立花なら喜んでくれるんじゃないかと、クリスマスマーケットなるものに行くことにした。
道すがらどんな所なのかを簡単に説明してやると、やっぱり目をキラキラと輝かせてすごく嬉しそうな表情になる。
喜んで貰えそうで良かった……。
今までデートコースなんか考えたことも無かったし、ましてやクリスマスの過ごし方なんか最もどうでも良いものだったから。
こうやって好きな人のために何かをしようと色々考えを巡らせる過程と言うのも、実はなかなか良いものだし、実際自分のプランを相手に喜んで貰えるととても嬉しいものなんだと言うことが良く分かった。
──過去の俺がどんだけ酷い男だったか、改めて思い知る。
車を駐車場に停めてエンジンを切ると、立花は少し緊張しながら「先生、これ、プレゼントです。良かったら使って下さい」と言いながら小さな紙袋を差し出した。
中には、綺麗にラッピングされた箱。
俺は立花から何かを貰うなんて考えてもなくて、少し驚いてぎこちなくお礼を言って受け取った。
立花はまだ学生、しかも高校生なんだし、そんなの用意しなくったって大丈夫なのに。
お前のその気持ちが、とても嬉しくて愛おしい。
「……いまここで開けても良い?」
「もちろんです」
少し緊張しながら丁寧に包みを解くと、箱の中には手袋が入っていた。
手の平に乗せて、立花の想いをしっかりと受け止める。
ありがとう。
きっとたくさん悩んで決めてくれたんだろうな。
そんな彼女を想像するだけで、思わず頬が緩む。