先生がいてくれるなら②【完】
だけど、幸い鈍感な立花には俺の本心は伝わらなかったようだ。
一応「お前を助手席に乗せると変な運転出来ないし、緊張すんの」と、軽い説明だけはしておく。
だがこれ以上は詮索してくれるな。
助手席に大切な人を乗せてる時はひとりの時とは違う緊張感があるなんて事を知ったのも、やっぱり立花だからだよ。
まだ首を捻っている立花に「分からなくても良いよ」と言っておいた。
いやもうホントに分からなくていいから……。
繋いだ手をゆさゆさと揺らしても、絶対に答えません。
俺は「……色々売ってるぞ。見なくて良いの?」と話を逸らす。
すると立花の目線がお店の方に移る。
そして、嬉しそうにキラキラと目を輝かせ始めた。
立花はどんな感情も正直に顔に出てしまうタイプだな。
まぁ俺の前では良いけど、色々気を付けて欲しい……特に他の男の前ではちょっとぐらいは繕えるようになった方が安全な気がする。
側にいられる時は俺が守ってやれるけど、四六時中一緒にいられるわけでもないから、ほんと気を付けて欲しい。
俺が心の中でこれから立花に群がって来るであろう未知の男どもと無意味に格闘している間に、立花は気に入ったものを見つけたらしい。
完全にそれに視線がロックオンしていて、お店の人にも声をかけられる始末。
ほら、そう言う所だよ、分かりやすすぎるんだ。
可愛いから良いけど。