先生がいてくれるなら②【完】
俺は慌てて握ったままだった立花の手を離した。
扉は閉まっているわけでは無いので、開け放たれた扉の横に立っている人物がすぐに目に入る。
「目が覚めたんだね、立花さん」
「光貴……、無理を言って悪かったな」
そう言うと、光貴は首を横に振る。
「兄さん、学校に戻って大丈夫だよ。後は僕がついてるから」
「でも……」
「それが立花さんの希望でしょ? 修学旅行、行ってきて」
振り返って立花を見ると、彼女も、うん、と小さく頷いた。
「……分かった」
「先生、帰ったらいっぱいお話聞かせて下さいね。楽しみにしてますから」
本来なら修学旅行を一番楽しみにしているのは学生である立花のはずだ。
不意のことで急に行けなくなるなんて、どれだけ残念に思っている事だろう。
立花の気持ちを思うと、やるせない気持ちになった──。