先生がいてくれるなら②【完】
それは、先生とクリスマスを過ごした翌日、──26日の事だった。
冬休みに入っているけれど、私は学校で勉強しようと家を出る。
すると、家から少し離れた場所に私より少し年上と思われる、とても綺麗な女性が立っていた。
彼女は私の方をじっと見た後、ゆっくりとこちらに向かって歩いて来る。
「ねえ、あなた。藤野先生の生徒でしょ?」
そう声をかけられた。
本当にとても綺麗な人で、その笑顔も、仕草も、とても美しいんだけど──。
「……それがどうかしましたか?」
私はなるべく平静を装ったが、どんどん心拍数が上がるのが分かった。
なぜだか理由はよく分からないけど、この人は、危険な気がする。
完璧すぎる美貌、仕草──だけど、笑顔が、なんだか少し怖い──。
「私、見たのよね。あなたが藤野先生の車であのマンションに入っていく所」
彼女はふふふ、と意味ありげに笑いながらも、私の事をを睨む。
「教師と生徒が付き合ってるなんて世間に知れたら、どうなるかしらね?」
そう言って女性はわざとらしくクスクスと笑った。
「……あなたは誰ですか?」
「あなた、バカなの? 自分の立場が分かってないみたいね」
「おっしゃってる意味が分かりません」
私の言葉が気に入らなかったらしく、彼女は顔を真っ赤にして怒り出した。
「今すぐ先生と別れなさい! さもないと、どうなるか分からないわよ!?」
「……付き合ってないのに、別れるとか別れないとか、無いと思うんですけど」
私はとにかく先生との関係を誤魔化そうと必死だった。