先生がいてくれるなら②【完】
多分、この人は先生の前の教え子なんだ。
前の私立高校では今みたいに “ジキルとハイド” じゃなかったから、きっと先生のファンが沢山いたに違いない。
これはちょっと……いやかなり、めんどくさいな。
──この状況をどうすれば乗り越えられる?
「下手な嘘はつかないほうが良いわよ。それに、世間にバレればどうなるかなんて、いくらあなたがバカでもさすがに分かるわよね?」
「……」
「バレたら、先生は犯罪者ね。あなただってタダじゃ済まないわよ? それでも良いの?」
良いわけない。
俯いたまま何も言い返せない私を見て、彼女は得意気に笑っている。
「証拠だってあるから、シラを切ろうとしても、無駄」
「証拠……?」
その言葉に、私はハッと顔を上げた。
彼女はまた得意げに笑いながら頷いて、携帯を取り出し操作を始める。
そして、私に画面を見せた──。
そこには──私と先生が車の中でキスをしている写真が映し出されていた。
「……っ」
その写真は、クリスマスイブの日……車で先生のマンションに戻ってきて、駐車場に入る前にした、あのキス……。
「いくら車の中だからって、誰かに見られるかも知れないのに、大胆ねぇ?」
「こんなの、合成かも知れないじゃないですか」
私だってこのまま引き下がるわけにはいかない。
抜け道を探さなければ、どこか、何か、この人の罠から上手く抜け出す方法を……。