先生がいてくれるなら②【完】
「どう? よく撮れてるでしょう?」
クスクスと笑いながら──だけど彼女の瞳は冷ややかなまま、じっと私を見据えている。
「こんな動画が学校に……いえ、世間に知れ渡ったら、先生はどうなるかしらね」
そんな事になったら……きっと先生は学校にはいられなくなるだろう。
真冬の冷たい風が私の頬を撫で、身体をどんどん冷やしていくのに反して、嫌な汗がツーッと背中を伝う。
「──私と先生が別れれば、その動画は消してもらえますか……?」
私がそう言うと彼女は「あら」と目を少し見開いて「そんなに簡単に消してあげられるわけないじゃない」と言って、意味ありげに微笑んだ。
手袋をしていない指先はもう感覚が無くなるぐらい冷え切っていて、私は手をこすり合わせるようにしたあとコートのポケットに手を突っ込んだけれど、残念ながら指先が温かくなる事は無さそうだった。
「あなたが私の言う条件をちゃんとクリア出来たら、考えてあげるわ」
“クリア出来たら消す”、では無いのか……。
私は落胆しながらも、彼女の提示する条件を、全て飲むしかなかった────