先生がいてくれるなら②【完】
──始業式の放課後、明らかに普通じゃない様子の私を心配した美夜ちゃんと悠斗が、めずらしく二人揃って私を特別教室棟の方へと引っ張って行く。
第二視聴覚室へ忍び込んで、私たちはそれぞれ椅子へ腰を下ろした。
「明莉、何があったの?」
美夜ちゃんが私の手をギュッと握って問いかける。
親友の問いに私はすぐに答える事は出来なかった。
「アイツと何かあったのか?」
悠斗の言う “アイツ” とは先生の事を指している事は分かっている。
私はこれにも返事をする事が出来ない。
何を言えば良いの……?。
私がした、あの最低な取り引きの事?
それとも、私が先生に言った残酷な言葉?
それとも────。
「明莉、……大丈夫?」
「ん……」
「いや、どう見ても大丈夫じゃないだろ。アイツに何かされたか?」
二人が心配してくれているのはよく分かっているし、本当にありがたい事だと思ってる。
でも……。
「何もされてないよ……、むしろ、私が……」
私が……先生を、傷つけた……。