先生がいてくれるなら②【完】

* * * * *

私は三年生になってから英語係を引き受けていた。


さすがに数学係をやるわけにはいかないので、早々に英語係に立候補したのだ。



英語は得意教科だから、係の仕事中に教科担任の先生に小言を言われる心配が無いから安心だ。




英語の教科担任から課題を集めて放課後に英語科の準備室に持って来るように言われていて、私は準備室の扉をノックする。


──返事が無い。


不在の場合はデスクの上に置いておくように言われた私は「失礼します」と一応声をかけて扉を開けた。



無人。


私は手に持っている英語の課題を教科担任のデスクに置く。


そして、ふと窓の外に目をやって──激しく後悔した。


中庭を挟んだ向こう側の廊下に、藤野先生を見つけてしまったのだ。



まだ全然忘れることなんか出来なくて、姿を見るだけでまだこんなにも胸が締め付けられる。


目にじわりと涙が浮かびそうになり、私は慌てて歯をグッと噛みしめた。


小さく息を吐き気持ちを落ち着かせて、準備室を出ようとした時だった。


「……あ」


他の学年を受け持っている男の先生が準備室に入って来た。


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