先生がいてくれるなら②【完】

クラス数の多いうちの学校は当然教師の数も結構多くて、自分の学年を受け持ってくれている人以外は実はよく知らなかったりする。


この先生も、見たことがあるような、無いような……。


私は一応「こんにちは」と頭を下げて、挨拶だけしておく事にした。


「こんにちは。えーと、三年生かな?」


その先生は上履きのラインの色をチラッと見て、そう言った。


「はい」


首から提げている名札には『1年 英語 細川 智之(ほそかわ ともゆき)』と書かれていて、その先生が1年の英語教諭の細川先生という人だと分かった。


若くて、カジュアルな服を着ていれば大学生にしか見えないから恐らく新卒採用の先生だろう。


新学期の全校集会で多分そんな風に紹介されていた気もする……自分の学年に関係ないからあまり覚えてないけど。



そう言えば、一部の女子が『爽やかでイケメンな新卒の先生が来た!』って頬を赤らめながら騒いでた、かも……。


私は興味ないから、半分寝てた。


だって──久しぶりに藤野先生と顔を合わせるかも知れないと思うと、緊張と気まずさで始業式の前の夜はなかなか寝付けなかったから、ホントにすごく眠かったんだよね……。



私はその新卒の先生に軽く会釈をして英語科の準備室を出ようとした時、「……あれ? もしかして」と頭上で声がした。



思いもよらない場所から聞こえた声と言葉に、私は思わず顔を上げる。


< 297 / 354 >

この作品をシェア

pagetop