先生がいてくれるなら②【完】
5月──。
大型連休が明け、爽やかな風が吹くある日の、放課後の事だった。
携帯に光貴先生からの着信があり、大学病院に呼び出され、いま病院の会議室に光貴先生と一緒にいる。
「ごめんね、どうしても緊急で確認したい事があって」
私に微笑みかける光貴先生は、珍しくいつもよりも少し強ばった表情だった。
「大丈夫です。あの、確認したい事って、何ですか?」
「うん……これなんだけどね」
そう言って白衣のポケットから取り出したのは、見覚えのある──ボイスレコーダーだった。
見覚えが──ありすぎて、吐き気がする……。
明らかに青ざめた私の顔を、光貴先生は少し目を伏し目がちにして見つめている。
「見覚え、あるんだね」
私は小さく頷いた。
「立花さん、これの持ち主の事って、何か知ってる?」
持ち主……。
このボイスレコーダーの持ち主は……。
でもその前に──