先生がいてくれるなら②【完】
私が茫然としていると、光貴先生が私の肩に手を乗せて「大丈夫?」と尋ねた。
大丈夫じゃない。ちっとも。
だけど、私は首を縦にも横にも動かす事が出来ないで硬直したままだった。
「立花さん……あのね、これは僕の想像でしかないんだけど、もしかして……彼女に脅されてたり、してない?」
ドクン、と心臓が跳ねる。
どう答えればいいんだろう?
彼女は今は重体で意識はないけど、回復して意識を取り戻す可能性はまだある。
そんな中、全てを言ってしまうのは、あまりにもまだ危険すぎる。
たっぷりと不振すぎる “間” を置いた後、私は小さく首を横に振った。
こんな事で光貴先生を欺けるとは、正直言って、思っていない。
けれども、いまここで認めてしまえば、後々後悔する事になりそうで怖い。
光貴先生は短い沈黙の後、「そう」と言った。
気付いていてもそれを言わない優しい光貴先生に、心の中でお礼を言う。
「光貴先生、その人……助かりそうですか?」
意識不明の重体──。
その言葉を使う状態の時、回復がとても難しい時なんだと思う。
「みんな頑張ってるよ。本人もね」
私は小さく頷いて、光貴先生が私と同じ考えであることに安堵した。