先生がいてくれるなら②【完】
──あぁ、なるほど、そう言うことか。
ここ最近の私の様子を見て、屋上から飛び降りようとか、そんなことを考えてるんじゃ無いかと危惧したわけだ。
さっき一瞬だけそんな事も考えたけど……私が死んだところで何かが変わるわけじゃないし、そんな簡単な道を選ぶことは私には許されてないと思う。
もっともがき苦しんで、解決への道を探さなきゃいけないんだ。
それが私に出来る精一杯のことだから──。
私が口を開こうとした時、また屋上の扉が開く音が響いた。
顔を覗かせたのは……息を切らせた藤野先生だった。
思わず私は顔を強ばらせる。
なぜ、このタイミングで、この人がここに……。
「あの……」
私が言葉を発しかけたその時、私の携帯がブルブルと振動し始めた。
二人の先生には見えないように気を付けて画面を見ると、光貴先生の名前が表示されている。
光貴先生からの電話、と言うことは、“彼女” に何か変化があったと言うことだ。
嫌な汗が手にじわりと滲む。
私は藤野先生に気取られないよう、慎重に電話に出た。
「はい、立花です」
『光貴です。いま、大丈夫?』
「はい」
『……彼女が、目を覚ましました』
────カチ、……
止まっていた時間が再び動き出したような、そんな音が私の脳内に一瞬響いた────