先生がいてくれるなら②【完】
しかし次の電車がそうすぐに来るわけが無く、私の隣に立った細川先生は他の列に並ぶ様子も無かった。
「大丈夫? まだ顔色悪いけど。休んだ方が良かったんじゃないの?」
「……大丈夫です」
一応心配してくれているようなので最低限の返事だけを返して、私はじっと前を見つめた。
細川先生はフッと苦笑しながら「それなら良いけど」と言った後、「……全然大丈夫そうに見えないけどな」と呟く。
どうしてこの人は私のことを放っておいてくれないんだろう。
雨の日はほとんどの部活は朝練が無い。
とは言え、体育館を使っているいくつかの部活は通常通り朝練があるから、他の生徒が全くいないわけではない。
こんな所を見られるのは困る。
お願いだから隣に立たないで欲しい。
そして、話しかけないで欲しい。
もう放っておいて欲しい。
アナウンスがホームに響き、電車が到着することを知らせる。
あぁ、やっと来てくれた。
ほんの数分の事だけれど私には何十分にも思えて、ホッと安堵の息を吐く。