先生がいてくれるなら②【完】
降りる人を見送り車内に乗り込むと、急に腕を引っ張られた。
「席がひとつ空いてるから座りなさい。具合悪いんだろ?」
──この人は、どうしてこう言うことをするんだろう?
座るまで腕を放してくれなさそうなので、私はしぶしぶ空いている座席に腰を下ろした。
細川先生はと言うと……さすがにすぐ目の前に立つのはどうかと思ったのか、ほんの少しだけ斜め前に立っている。
お願いだから、もっとあっちに行って欲しい。
電車が動き始めると、揺れるのが気持ちよくて私はすぐにうとうとし始めた。
昨晩、彼女のことを考えていて全く眠れなくて……今頃睡魔が襲ってくる。
うとうと……気持ちいい……このまま何もかも忘れてしまいたい……。
しばらくうとうとした後、急にトントンと腕を叩かれて目が覚めた。
気付くと私の右隣には細川先生が座っていて……あろう事か私は細川先生の肩に完全にもたれかかって眠ってしまっていたらしかった。
「ぐっすり眠ってる所悪いんだけど、もう駅に着くよ」
電車はゆっくりとブレーキをかけて停車する準備を始めている。
私はハッと我に返ってもたれていた体勢から急いで身体を起こし「ごめんなさい……」と謝った。
避けたいと思ってる人の肩を借りて眠りこけるなんて、大失態だ。
それに……こんな所を誰か同じ学校の人に見られたりしたら、と気が気じゃ無かった。