先生がいてくれるなら②【完】

クラスの女子たちの話によると、どうやら本当に細川先生は生徒に人気があるらしく、既にファンクラブらしきものも出来てると言う話だ。


その手の人に関わるとどうなるか身に染みて分かっているはずなのに、また同じ事を繰り返しそうな勢いの自分に本当に嫌気が差す。



電車がホームに滑るように到着し、私はヨロリと立ち上がって電車から降りる。


出来れば一緒に歩きたくないので、私はわざとゆっくりと歩いた。


前を歩いていた細川先生との距離が少しずつ広がる。


うん、これで良い。



いつもより一本遅い電車だったけどまだ普通に登校するには早い時間で、同じ学校の制服を着ている人は幸いいまは一人も歩いていない。


降りる人のまばらな駅の改札を抜ける。


雨が降っている音が聞こえてきた。


雨は嫌いじゃない。


むしろ雨音は好きな方だ。


傘をゆっくりと開いて、駅の屋根がかかっている部分からゆっくりと、一歩だけ外へ踏み出す。


パラパラと雨が傘を叩く音がする。


ほんの少しの間だけ立ち止まって、雨音に耳を傾ける。


不規則に傘を叩く音に、なんだか癒やされる気分になる。


< 322 / 354 >

この作品をシェア

pagetop