先生がいてくれるなら②【完】
「──来ないと思ったら、何やってんの?」
気分を台無しにする、細川先生の声が聞こえた。
傘を目線より上にあげて前に立つ人を見ると、心配そうに顔を覗き込まれた。
「……大丈夫?」
私は心の中でため息をそっと吐く。
私は細川先生の問いに答えず、先生の横をすり抜けて学校へと歩き出した。
どうしてそのまま先に行ってくれなかったんだろう。
先生だって生徒と一緒に歩いている所を誰かに見られたら、困ったりするんじゃないのかな。
それこそ他の先生に見られたりしたら、注意されたりしそうなものだけど。
「立花さんはいつも雨の日は不機嫌なわけ?」
「……なんですかそれ」
「初めて会った時も雨で、機嫌が良いとは言えない状態だったし」
「……覚えてません」
「はははっ」
いつの間にか隣を歩いて話しかけてくる細川先生に適当に言葉を返す。
いまの私にはこの人を上手くかわす精神的余裕が無い。
私の頭の中は、いまは彼女のことでいっぱいだった。