先生がいてくれるなら②【完】
「おい、……岩崎、お前、分かってて言ってんだろうな?」
俺が、その名前を一生聞きたくないって事、分かって言ってるんだろうな?
『分かってるよ。いいから早く答えて。あいつの話、何か聞いてない?』
「聞いてない!」
『……そう、なら良いけど……』
「いや、良くねーだろ! 俺にその話を振るんだから、それなりの覚悟があるんだろうな?」
『……あ、あぁ、ごめん、全然無いわー。忙しい所悪かったな、じゃ、またなー』
「はぁ!? おい、ちょっ……、、、、、切れた……」
通話は岩崎の手によって、一方的に切られた。
は?
意味分かんないんですけど!?
俺がどうしても聞きたくない人間の名前を出しておいて、たいした詫びも入れずに一方的に通話を切るとか、お前何様だ!?
……くそっ、気になって仕事が手に付かねぇ。
ついでに口もどんどん悪くなるし……。
ちっ。
岩崎にコールバックするが、出ない。
……ふざけやがって。
──俺はこのとき、まだ事の重大さに何一つ気付いていなかった────。