先生がいてくれるなら②【完】
先生の顔が、驚きから、無表情に変わる──。
「……本気で、言ってる?」
「もちろんです」
先生の美しいブルーグレーの瞳が冷ややかさをたたえている。
いつもはキラキラと光っているのに、いまはすっかり凍り付いていて、恐ろしいほどに寒々しい。
それでも美しさは損なわれていなくて、いやむしろ冷酷な美しさを放っているようにさえ見える。
このブルーグレーを見るのはもう今日で最後なのだと思うと、涙が込み上げそうになった。
だけどここで泣いてしまえば、あの人との取り引きが成立しない。
私は先生から目を逸らして、わざとため息を吐いた。
「私もう、先生と一緒にいるの、疲れちゃった……」
これが、最後の、言葉────。
先生は私の酷い言葉を聞いて、ひとこと小さな声で「分かった……」と言って──ドアを乱暴に開けて、出て行った────。