先生がいてくれるなら②【完】
──二人は彼女がこれまでにした事のほとんどを調べたらしい。
それを踏まえて、高峰さんが私に何かをしたのだろうと推測したようだった。
「あの……、ひとつ聞いても良いですか?」
二人が頷く。
「あのボイスレコーダーの内容を聞くことになったきっかけは、何だったんですか?」
そもそもあの音源を聞くことが無ければ、高峰さんと私の関係は分からなかったはずだ。
「ただの偶然なんです」
そう答えたのは光貴先生。
「僕が救急の応援に行っていて。スタッフが持ち物からご家族に連絡しようと思った時にうっかりレコーダーの再生ボタンに触れてしまったんです」
……なるほど。
だとすれば、あれを耳にしたスタッフと光貴先生はさぞかしギョッとした事だろう。
カラオケで別れ話とか、笑い話にもならない。
「最初は誰の声かまでは分からなくて。……でも、会話の内容からも、なんとなく聞き覚えのある男の声からも……きっと立花さんと兄さんの会話なんだろうなって」
「……」
「普段の立花さんの様子から、あの言葉は嘘なんじゃないかなって思って。我慢するのに疲れたなんて、本当は思ってない、でしょう?」
光貴先生には全てお見通しですね……。
私は苦笑しながらもコクリと頷いた。
「だとしたら、彼女に言わされ、録音させられたんだろうな、って」
私は再びコクリと頷く。