先生がいてくれるなら②【完】
「立花さん、何に困ってるの?」
「えっと……、べん、きょう……」
恥ずかしくて、声がだんだん小さくなる。
そんな私を光貴先生は一切笑ったりせずに、眉尻を下げて「ごめんね、そうだよね」と申し訳なさそうに呟いた。
光貴先生は私が理系に転向した事も知っているし、理転したくせに理数系科目が苦手なのも知っている。
何より、孝哉先生と別れたことによって数学も化学も教えて貰えなくなった事もきっと分かっているだろう。
「分かった、それは私がなんとかしよう」
そう言ったのは藤野教授だ。
「明莉さんに勉強を教えられる人間に何人か心当たりがある。すぐに手配しよう」
その後、教授の取り計らいで私に医学部卒のとても優秀な家庭教師がついた。
……もちろん女性です、安心安全。
3学期以降ずっと下降しっぱなしで見るも無惨だった私の成績は、家庭教師をつけていただいた事によって徐々に元の成績を取り戻しつつある。
さすがに医学部を卒業しているだけあって、理数科目だけでなく、全ての教科をカバーしてくれる。
本当にありがたい。
まだまだ目標の成績には届いていないけど、なんとかなりそうな気がして来た。
とにかく頑張るしかない。
勉強も、高峰さんの事も────。