先生がいてくれるなら②【完】
──『もう顔も見たくない』。
──そう思っても、どうしたってアイツとは顔を合わせることになる。
俺は立花のクラスの副担任だし、当然の事ながら数学の教科担任でもある。
そして数学の授業は基本的にはほぼ毎日ある。
つまり俺は、毎朝部室で掃除をするアイツの気配を感じながら授業の準備をし、毎日どこかのタイミングでアイツのクラスの授業をしなければならない。
廊下を歩けば、場合によっては出くわすこともある。
「……どんな地獄だよ」と、思わず独り言が口から零れる。
────地獄。
このとき本当に地獄の中にいたのは、俺なんかじゃなくて、立花の方だった。
その事を知るのは、もっと、ずっと後のことだ──。