先生がいてくれるなら②【完】
その人は、私を病院の階上にある、とある一室へといざなう。
その部屋は教授室らしい。
部屋へ入ると、ソファに座るように促された。
「藤野教授、ですよね?」
私の言葉に、彼は小さく頷く。
そう、彼は、孝哉先生と光貴先生の父親であり、この病院の教授でもある人物だ。
二人の藤野先生の独特の雰囲気は、この人とよく似ていると改めて感じる。
「私は星城高校二年の、立花明莉と言います。藤野孝哉先生には数学を教えて頂いていて……」
「彼が連れてきた女性がまさか高校生だとは思わず、私は正直とても驚いている」
私の言葉を遮るように、藤野教授はそう言った。
それはそうだろう。
個室を空けさせ、研修医の次男まで引っ張り出させるなんて、どんな女だ──と思ったら高校生だったなんて。
教授が驚かれるのも無理は無い。