先生がいてくれるなら②【完】

廊下に残された私は、赤くなった顔が元に戻ってることを願いながら、準備室の扉をノックする。


中から「はい」と応答があったので「立花です」と言うと、すぐに扉が開いた。



「おはようございます、先生」

「おはよう。……中にどうぞ」


先生は、いつも通りの無表情。


どうやったらこんな風に無表情になれるんだろう。


素の表情なのか、それとも、作った表情なのか……。


「失礼します」


扉を閉めて中へ進むと、先生は「座ってて」と言って、奥へと消えた。


多分、コーヒーを淹れる準備をしてるんだと思う。



しばらくすると、やっぱり、コーヒーの甘く芳しい香りが準備室に漂い始めた。


私は思わず深呼吸をして、この時間と空間を愉しんだ。


< 98 / 354 >

この作品をシェア

pagetop