先生がいてくれるなら②【完】
廊下に残された私は、赤くなった顔が元に戻ってることを願いながら、準備室の扉をノックする。
中から「はい」と応答があったので「立花です」と言うと、すぐに扉が開いた。
「おはようございます、先生」
「おはよう。……中にどうぞ」
先生は、いつも通りの無表情。
どうやったらこんな風に無表情になれるんだろう。
素の表情なのか、それとも、作った表情なのか……。
「失礼します」
扉を閉めて中へ進むと、先生は「座ってて」と言って、奥へと消えた。
多分、コーヒーを淹れる準備をしてるんだと思う。
しばらくすると、やっぱり、コーヒーの甘く芳しい香りが準備室に漂い始めた。
私は思わず深呼吸をして、この時間と空間を愉しんだ。