竜使いの少女が恋したのは王子様でした【完】
 私は、飾り棚から古い小さな箱を取り出す。持ち上げると崩れてしまいそうなドライフラワーの小さな指輪。

くすっ

私は、小さく苦笑いをこぼす。

 幼い私は、この指輪をしてアウリスと結婚するって本気で信じてた。乾燥した指輪をすることも、身分違いの結婚をすることも、できるはずないのに。


捨ててしまおうか……

捨ててしまえば、もうアウリスのことを思い出すこともない。

こんなに苦しまなくていい。


私は箱を握りしめる。


やだ……

アウリスにもらったたった一つのプレゼントを捨てるなんて、できないよ。


頬を涙が伝う。

診療所で流した涙とは違う涙。

診療所では、終わってしまえば、すぐに涙は止まった。

思い出しても、泣くことはない。


だけど……

なんでアウリスのことは、こんなに思い出すたびに苦しくなるの?

忘れられれば、きっと楽になるのに……







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