竜使いの少女が恋したのは王子様でした【完】
「レイナ、レイナ!」

肩をそっと叩かれて、目が覚めた。

「レイナ、大丈夫か?」

目の前に、心配そうに覗き込む父の顔があった。

いつの間にかソファーで眠ってしまっていたらしい。

はっ!

「指輪!!」

右手の中にあったはずの箱がない。

私は飛び起きた。

見ると、テーブルの上にちょこんと箱が一つ置いてある。

私は、そっと蓋を取り、箱を手にして覗き込んだ。


はぁ……

良かった。壊れてない。


安心した私は、ほっと胸を撫で下ろす。


ふと見ると、足元に毛布が申し訳程度に掛かっている。

こんなの掛けた覚え……

「熱上がってるから、食欲はないかもしれないが、少しでも腹に入れてから寝ろ」

お父さんだ。

帰ってきたお父さんが、私に毛布を掛けて、夕飯の準備までしてくれたんだ。


 鼻をひくひくとさせてみれば、家中にいい匂いが立ち込めている。テーブルの上には、おいしそうなスープとパンが並べられている。

「これは……
 サーモンのクリームスープ?
 おいしそう」

私は手を洗い、席に着く。

「あのヤブ医者が言ってたからな。
 この1ヶ月は、牛でも山羊でもいいから、乳をたくさん飲ませろって」

そういえば、言ってた。私は痛くて、ろくに聞いてなかったけど。

見れば、横に置かれているのは、いつものベリーのワインではなく、牛乳だ。


私、お父さんにたくさん心配させたんだな……


そう思うと、申し訳なくなる。

私は、せめてもの感謝の意を表そうと、出された食事を全て綺麗にいただいた。

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