竜使いの少女が恋したのは王子様でした【完】
 しばらくして戻ってきたオルヴォと一緒に竜の世話をする。まずは、竜笛で竜を巣の外に出し、たっぷりと餌をあげる。その間に巣の中を掃除する。

「やり方さえ教えてくれれば俺がやるから、レイナは休んでろよ」

オルヴォが気遣ってくれる。

「ありがとう。でも、大丈夫。
 2人でやった方が早いしね」

私たちは、ほうきで巣の中の汚れた寝藁(ねわら)を書き出し、新しい寝藁を入れる。

「うちの藁がこんな風に使われてるんだな」

オルヴォは呟く。

「うん。この汚れた藁を向こうで発酵させて、今度はこれがオルヴォんちの畑の肥料になるのよ。竜の糞が混ざってるから、栄養満点でしょ?」

私たちは仲良く会話しながら、作業をする。

 巣の掃除を終えると、竜の訓練を始める。竜に乗ることはできないけど、幼い竜に「伏せ」や「待て」を教えることはできる。それをそばで見てたオルヴォが言った。

「レイナの手が治ったら、俺にも竜の乗り方、教えてくれる?」

竜は、基本的に王侯貴族と一部の商人にしか利用を認められてない。反旗を翻す可能性がある者には国防の観点から使用が禁止されてるのだ。

でも……

「いいよ。
 竜の世話を手伝ってくれるオルヴォなら、何か言われても、竜使いの見習いって言えるもんね」

「ああ、そうだな」

そう答えたオルヴォは、何か言いたげな複雑な表情をした。

「ん? オルヴォ、どうかした?」

「いや……」

なんだか、歯切れが悪い。でも、オルヴォはそれ以上、何も言わない。

ま、いっか。


 私たちは、夕方まで一緒に仲良く働く。オルヴォが私を気遣って、いろいろ手伝ってくれたお陰で、とてもスムーズに仕事を終えることができた。

「オルヴォ、よかったら、うちでご飯食べていかない?」

私は、今日のお礼にオルヴォを夕飯に誘う。

「いいのか?」

私に尋ねながら、オルヴォは父を見遣った。

「もちろん。ね、お父さん?」

「ああ」

父はちらりとこちらに視線をよこして頷く。すると、オルヴォはほっとしたように承諾する。

「だったら、喜んで」

私たちは、3人連れ立ってうちへと帰った。

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