竜使いの少女が恋したのは王子様でした【完】
 私は手を洗い、エプロンをつけて、夕飯の準備を始める。すると、オルヴォが私の隣に立って言う。

「俺も手伝うよ」

「えっ、いいよ。
 オルヴォが頑張ってくれたお礼なんだから、その辺に座ってて」

手伝ってもらったら、誘った意味がなくなっちゃう。

「でも、その手じゃ不便だろ?
 うちの野菜なんだから、俺に任せとけ」

オルヴォはそう言って、野菜を洗い始める。

確かに、オルヴォんちの畑の野菜だけど……

結局、洗うのも切るのも炒めるのも煮込むのもオルヴォがやってくれて、私は、ただ味を整えただけだった。

「ごめんね。
 こんなはずじゃなかったのに」

私が謝ると、オルヴォはくしゃりとわたしの頭を撫でる。

「そんなこと、気にするなよ。
 だったら、レイナの手が治ってから、改めて食べに来るよ。それならいいだろ?」

「うん!」

やっぱりオルヴォは、私のお兄ちゃんみたい。



 私たちは、3人でテーブルを囲んで夕食を食べる。父とオルヴォはベリーのワインを酌み交わし、楽しげに会話している。

「オルヴォは、今日1日、竜の世話をしてみてどうだった?」

父が尋ねる。

「楽しかったです。麦や野菜も世話をしたらした分だけ、大きくなったりおいしくなったりしますけど、その反応が出るのは毎日世話をして1ヶ月後とか3ヶ月後とか、長いと半年後じゃないですか。でも、竜はその場で喜んでるのが分かるので、すごくやりがいがありますよね」

そっか。
言われてみれば、毎日竜たちが嬉しそうにしてくれるから、私も楽しくなるんだもんね。

「そうか。
 それなら、良かった。
 オルヴォは、真面目だし、仕事も丁寧だし、きっと竜使いになっても、うまくやれるだろうな」

そう褒める父の横で、私はうんうんとうなずく。

「うん! 私もそう思う。
 竜たちもオルヴォのこと、気に入ってたし。
 きっと、オルヴォが優しいのが竜にも分かるんだね」

私がそう言うと、オルヴォは少し照れたように目尻を下げる。

「嬉しいです。そんな風に言ってもらえて。
 明日も頑張ります」

えっ?

明日も?

驚いた私は、目を(しばた)かせる。

「おい、オルヴォ。
 明日もうちを手伝うつもりか?」

父が聞きとがめる。

けれど、オルヴォは、

「はい!
 レイナの腕が治るまで、毎日来ます」

と、平然と答える。



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