竜使いの少女が恋したのは王子様でした【完】
「オルヴォ!?」

そんなの、申し訳なさすぎる。

驚く私をよそに父がたしなめる。

「オルヴォには、ヤーコブの農園の仕事があるだろう。そこまで無理をする必要はないよ」

だけど、オルヴォはにっこりと微笑んで答えた。

「大丈夫です。父にも今朝、言ってきました。
 困った時はお互い様なので、レイナが元通り働けるようになるまで、邪魔にならないように、手伝ってこいって言われてます」

私は、思わず父と目を見合わせた。

「ほんとにいいの?オルヴォ」

窺うように尋ねる私に、オルヴォはにっこり笑って答える。

「当たり前だろ? だから、明日からも遠慮なくビシバシ使ってください」



 翌日から、オルヴォは毎日うちで働いてくれた。お陰で、今まで以上に仕事は捗るし、私も今までとは違った楽しさがある。父と2人だと、竜のことしか話すことはないんだけど、オルヴォとは町で見かけたいろんな物のこととか、読んだ本の話とか、いろんな雑談ができるから。





 そうして1ヶ月後、私の腕を固定していたものが無事に外された。私はその足でオルヴォの家へと向かう。このひと月、ずっと支えてくれたオルヴォにお礼を言いたくて。

「オルヴォ!」

私が声を掛けると、

「レイナ!」

と、オルヴォは駆け寄ってきた。

「もう、大丈夫なのか?」

「うん。今まで本当にありがとう。
 オルヴォのおかげで、とっても助かったよ」

私がお礼の言葉を伝えると、オルヴォは、

「少し、散歩でもしないか?」

と誘った。

「? うん」

オルヴォの表情に何かいつもと違うものを感じて、少し首を傾げたものの、私はそのまま頷いてオルヴォと共に歩き始める。

「レイナは、将来のこととか考えてる?」

「将来のこと?」

なんだろう? いきなり。

「レイナはさ、子供のころ、王子様と結婚するって言ってただろ?」

!!

思い出した!

子供の頃、オルヴォに言われたんだ。

王子様とは結婚できないよって。

王子様はお姫様と結婚するものだって。
< 25 / 39 >

この作品をシェア

pagetop