竜使いの少女が恋したのは王子様でした【完】
 私が日々葛藤していると、昼間、アウリスがエドヴァルド・スプルスの球果を集めに行っている隙に、父が話しかけてきた。

「レイナ、ずっと見てきたが、お前はどうしたいんだ?」

「どうって?」

「オルヴォとアウリス、2人ともあのままにしておくのは、どちらにも悪いと思わないのか?」

「思うけど……」

どうすればいいのか分からない。

「思うなら、ちゃんと断れ。
 オルヴォにもう来るなと言うのか、アウリスにその気はないから城に帰れと言うのか、それはレイナが決めるんだ」

そう……だよね。

私の気持ちは決まってる。

アウリスと結婚できないとしても、オルヴォとどうこうなるということはない。

「分かった。ありがとう、お父さん」

私は父に礼を言って、仕事に戻る。


うん、今夜、ちゃんと言おう。



 その夜、オルヴォはいつものように野菜を持って現れた。

「ありがとう。オルヴォ、ちょっといい?」

私は、戸口からオルヴォを外に連れ出した。まもなく極夜というこの季節は、昼前後に数時間低く太陽が昇るだけで、夕刻はとうに真っ暗で、とても寒い。

私は暗闇の中、オルヴォに切り出した。

「オルヴォ、いつもありがとう。
 オルヴォの気持ちは、すごく嬉しいんだけど、前にも言った通り、私、オルヴォのことは、友達以上には思えないの。
 だから、ごめん。明日から、もう来ないで」

私は、精一杯、誠実にオルヴォに自分の気持ちを伝える。

「あいつが好きなのか?」

オルヴォの表情が悔しそうに歪む。

私は、黙って頷いた。

ふぅぅ……

オルヴォは俯いて大きくため息を吐く。しかし、一瞬の後、顔を上げたオルヴォは優しく微笑んだ。

「分かった。今まで困らせてごめんな。
 これからは、レイナはソニヤと同じように妹として扱うようにするよ」

「うん……」

やっぱりオルヴォは優しい。

「じゃあ、帰るよ。レイナまたな」

オルヴォは持っていた野菜籠を私に手渡すと、私の頭をくしゃっとひと撫でして、帰っていった。

オルヴォ、いろいろありがとう。
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