俺様社長の強引愛はただの純粋な愛でした◆おまけのお話を追加しました◆
セクハラとパワハラで食事を勝ち取った柳田は約束通り一花の手を離し、慣れた足取りでエレベーターへ乗り込む。その後ろから、ガックリとした一花が後を追うように乗り込んだ。

エレベーターからも夜景が見える。
どんどん高くなる景色を、一花は無言で見つめていた。

社会人になって男性と二人で食事をするのは初めてだ。断れば大抵は諦めてくれる。少なくとも今まではそうだった。柳田のような強引な誘い方は初めてで、上手く対処ができなくて調子が狂う。

一花はガラスにもたれ掛かりながら小さくため息をついた。

「しんのすけ、着いたぞ」

「あ、はい……」

目の前の何とも高級そうなレストランの入口で、一花はまた躊躇った。
そんな気持ちを知ってか知らずか、柳田は一花の腰に手を回し、半ば引きずるように中へ入っていく。

「いらっしゃいませ、柳田様。いつもありがとうございます」

「突然で申し訳ないが、窓側でお願いしたい」

「はい、かしこまりました」

柳田に対してうやうやしく頭を下げる店員の姿を目の当たりにし、一花は自分は場違いなのではとひしひしと感じた。
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