俺様社長の強引愛はただの純粋な愛でした◆おまけのお話を追加しました◆
名字でお願いします
「めんどくせー」

突然柳田が子供みたいな悪態をつき、一花はパソコンのモニターから顔を上げる。

「どうしたんですか?」

「行きたくねー。今度の講演会」

最先端医療用カテーテルの講演会が神戸で開催され、一部柳田も登壇することが決まっている。たくさんの企業や団体が参加し、会社の名を売る最善の場所でもあるのだが、当の柳田のやる気が削げていた。
こういった講演会は初めてではないし、むしろ今までなら何でも参加して会社の名を売りまくる柳田だが、今回は頬杖をついて大きなため息をつく。

「取材が入るんだと」

「良いことじゃないですか?」

一花は首をかしげる。
取材が入るならなおのこと会社の名が売れるではないか。

「あの女が来るんだよ。いちいちメールしてきやがって」

「あの女?」

一花の疑問に柳田はぶすっとしたまま答える気はないようだ。

「……お土産買ってきてくださいね」

「あ?しんのすけも行けよ」

「え?行きませんよ。ねえ、向井さん」

向井が口を開く前に柳田からの鋭い視線が向井を貫き、その睨みっぷりに思わず苦笑いだ。

「あー、えーっと、そろそろ野原さんも出張してみてもいいかもしれないですね」

「えっ?」

思わぬ向井の賛同に一花は目を丸くして固まった。

「神戸牛、期待していますね」

ちゃっかりお土産まで指定した向井は、楽しそうに口角を上げる。柳田は大袈裟に頷き、一花は目をぱちくりさせた。
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