身代わり花嫁なのに、極上御曹司は求愛の手を緩めない
劇的婚
独特の低い軋み音を響かせて、重厚な木製扉が開く。

広々とした堂内には、ステンドグラスを通る柔らかな光が幾重にも重なり、芸術的で神聖な美しさだった。

ここ、十八世紀の英国国教会の趣と伝統を感じる厳かな大聖堂は、都内某所にある結婚式場、Marieyon(マリヨン)の敷地内に建てられている、人気のウエディングチャペルだ。

純白のウエディングドレス姿の私、今井紗衣は、本日初めてお目にかかったばかりのお母さまからベールダウンを受け、同じく本日初めてお目にかかったばかりのお父さまと腕を組み、真紅のバージンロードを歩く。

バージンロードは花嫁の人生と重ねられていて、花嫁はその上を、自身の半生に思いを馳せながらゆっくりと歩む。

けれど私には過去など振り返る余裕はなく、とにかく少しでも早く列席者席を通り過ぎたい一心だった。

特に私の左側、新婦側の席がざわついているのには、気づかないふりをする。

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