身代わり花嫁なのに、極上御曹司は求愛の手を緩めない
「お待ちください! 沙絵がいなくなったのには、何か重大な理由があるはずです! 甘やかして育ててしまい、わがままな面がないとは言えませんが、なんの事情もなく出ていくなどありえません。沙絵は本当に菖悟くんとの結婚を心から望んでいたんです。どうか沙絵を見捨てないでやってください!」

「そう言われましてもね……。とりあえず、なんとかこの場を取り繕う方法はないかしら?」

高須賀さまのお母さまは、私に助け舟を求めた。納得はしていないが、懸命な川嶺さまのお父さまを無下にはできないようだ。高須賀さまのお父さまは渋面を作ったまま、何か考え込んでいるようだった。

川嶺さまは何か重大な理由があっていなくなったという、彼女のお父さまの言葉を信じたい私としても、結婚式をキャンセルにしたくはなかった。

けれどもう四十分後には挙式が迫っていて、このままでは予定通り進行するのは不可能だ。主役の花嫁が不在では、どうにもならなかった。
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