身代わり花嫁なのに、極上御曹司は求愛の手を緩めない
「菖悟さんと結婚できるだけで幸せだったのに、私は欲を出してなんてことをしたんだろうって、この一ヶ月ずっとずっと悔やんでっ……」

川嶺さまはわっと泣き出した。私はどうすることもできずにただただ彼女を見つめる。彼女は今もまだ、彼が好きなのだ。痛ましいくらい強い気持ちに、私は圧倒される。

川嶺さまは今日までどんな思いで過ごしていたのだろう。どれだけ涙を流したのだろう。

それなのに私はのうのうと、菖悟さんの隣で笑っていたのだ。

菖悟さんと川嶺さまがすでに破談しているのは紛れもない事実でも、私は配慮が足りなかった。もし彼女が知れば、きっと傷つく。

今頃は彼女も吹っ切れて前に進んでいると疑うことさえなかった私は、いい気なものにもほどがある。自分本位でしか考えていなかった。

「……菖悟さんが私を好きじゃなくてもいい。ほかに好きな人がいたっていい。なんでもいいからあの日に戻って、菖悟さんのお嫁さんになりたいっ……」

彼女の本音に、私の胸は引き絞られた。きっと誰にも言えず、ひとりで抱え込んでいたのだろう。その苦しみは私には計り知れない。
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