身代わり花嫁なのに、極上御曹司は求愛の手を緩めない
何か案はないだろうかと、北瀬マネージャーを振り返ろうとしたときだった。

高須賀さまはいきなり私を品定めするように、頭の先から足の先まで視線でなぞる。

「何か……?」

私は眉をひそめた。この切迫した状況で、高須賀さまが私に注目する理由がわからなかった。

誰もが高須賀さまの行動を不思議に思いつつ静観している。

「あなたがいい」

そう口にしながら、高須賀さまは私を壁面に追い詰めるように歩み寄った。

「え?」

「俺の花嫁になってくれ」

憚りなく発せられた高須賀さまのプロポーズに、私は大混乱に襲われた。

高須賀さまは一体何を言い出すのだろうか。私は彼の結婚式を担当しているウエディングプランナーだ。

いやそれでなくても、初対面の相手に花嫁になってくれなんて只事じゃない。

「あの、高須賀さま……? 何をおっしゃっているのですか……?」

反射的に後ずさりながら、私は顔を引き攣らせた。

「あなたは沙絵に背格好が似ているし、なんなら名前も同じだ。危急の花嫁の代役に最適だろう」

「あらまあ、あなたもサエさんとおっしゃるのね」

高須賀さまのお母さまは私の胸元のネームプレートを覗き込んだ。
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