身代わり花嫁なのに、極上御曹司は求愛の手を緩めない
答えない私を、菖悟さんは訝しげにのぞき込んだ。

私は一度、ぎゅっと目を瞑り、それからすぐにとびきりの笑顔を彼に向ける。

「水族館がいいです」

――川嶺さま、明日一日だけ、許してください。菖悟さんとの思い出をください。

心の中で何度も川嶺さまに謝罪する。明日が終われば私は身を引くと、そう決心してのことだった。

私は菖悟さんへの恋を終わらせる。

そんな胸の内を知らない彼は、私のリクエストに顔をほころばせた。

「水族館だな。楽しみだ」

菖悟さんの眼差しが優しくて、胸が切なくてたまならかった。
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