身代わり花嫁なのに、極上御曹司は求愛の手を緩めない
一睡もできないまま夜は明けた。それでも私はいつもより遅めに起きていき、菖悟さんに朝の挨拶をする。

「おはようございます。すみません、つい寝すぎちゃいました」

「おはよう。俺もついさっき起きたところだ。カフェでブランチをしてから、水族館に行こうか」

そう提案され、私は笑顔で了承した。

今日は菖悟さんが運転してくれるという。彼の助手席に乗るのは初めてだった。彼にも専属の運転手がいるから、彼自身はハンドルを握らないのだと思っていたけれど、意外と時間があればひとりでドライブに行ったりもするらしい。マンションの地下駐車場には、彼が所有するドイツの高級車が停まっていた。

助手席のドアを開けられ、恐縮しながらも乗り込む。彼はとても運転がうまく、乗り慣れている様子が窺えた。

海の近くの絶景を望むロケーションで、ゆったりとしたブランチタイムを過ごす。

そこから水族館は車で五分の距離だった。

子どもの頃、両親に連れてきてもらった思い出の水族館は、平日にもかかわらずたくさんの家族連れやカップルで賑わっていた。
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