身代わり花嫁なのに、極上御曹司は求愛の手を緩めない
夜はさらに私のリクエストで、鉄板焼きを食べに行った。おいしいお肉が食べたいです、と申し出た私に、菖悟さんは「同じことを思っていた」と笑って、行きつけのお店へ連れて行ってくれた。

軽く炙った飛騨牛の特選ヒレは、口に入れた途端にとろけた。岩塩と黒胡椒しかつけてないのにとても甘く、お肉のうまみが口いっぱいに広がる。隣で焼いてもらったアワビも絶品だった。

大満足で店を出て、帰路につく。

楽しいことしかなかった一日は、そこで終わりじゃない。

交代で風呂を済ませると、菖悟さんは私をリビングのソファに手招きした。

おずおずと彼の隣に腰を下ろすと、シャンパンを勧められる。

「今日はとっても楽しかったです。ありがとうございました」

「俺も楽しかったよ。水族館なんて子どもの頃以来だったが、おとなでも堪能できるものだな」

「菖悟さん、熱心にウミガメのあかちゃん見てましたね」

「ああ。子ガメかわいくて癒された」

確かに一生懸命泳いでいる姿が愛らしかった。けれど彼がカメに興味を持つなんて意外だ。そんな彼のほうがかわいいと思ったのは私だけの内緒だった。
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