身代わり花嫁なのに、極上御曹司は求愛の手を緩めない
カーテンの隙間から、朝の柔らかな光が射し込んでいる。

微睡みから目覚めると、私は菖悟さんに腕枕されていた。

長くて短い夜は明けたのだ。

窓の外はいつもどおりの朝だった。

「おはよう」

私が微かに身じろいだ振動が伝わってしまい、菖悟さんも目を開けた。

「すみません、起こしてしまいましたか……?」

「いいや、今何時だ?」

言いながら、菖悟さんはベッドヘッドの時計を見る。

時刻は六時で、普段の起床時間より少し早かった。けれど二度寝するには微妙な時間だ。

「もっとこっちに来い」

ベッドに横たわったまま、頬をすり寄せられた。

思わず身を硬くすると、彼はクスクス笑う。

「なんだその反応は? 昨夜はもっとすごいことをしただろう?」

「なっ……」

「知っていたつもりだが、まさかあんなにウブだったとはな」

私は口をぱくぱくさせた。けれどすぐに不安がよぎり、彼に訊かずにはいられなくなる。

「あ、あの……」

「なんだ?」

「……菖悟さんはよかったですか?」

私の質問に、彼は面食らった顔をした。

固唾を呑み返答を待っていると、目をすがめた彼に指で頬を撫でられる。

「よくなかったら、あんなに何回もしないだろ?」
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