身代わり花嫁なのに、極上御曹司は求愛の手を緩めない
あいりちゃんは私と菖悟さんを運命だと言ったけれど、そうじゃない。
最初から何もかも、私は彼に相応しくなかった。私は彼の結婚式を担当するウエディングプランナーで、彼と川嶺さまを祝福する立場だったのだ。
だから、本来の姿に戻るだけだ。私はまたお客さまの幸せのために生きていく。
『俺の気持ちを知っていて、そう言うんだな?』
菖悟さんの声には怒気が孕んでいた。手のひらを返され、冷静さを失っているようだった。今朝までの関係はなんだったのかと、私を詰りたいはずだ。私が菖悟さんの立場だったら、きっと許せない。
けれどそれでよかった。私を恨んでほしかった。そのほうが、私は彼を諦められる。最後まで自分勝手でごめんなさい。菖悟さん、川嶺さまと幸せになってください。
「はい」
私ははっきりと頷いた。
重苦しい沈黙が流れる。私は息をするのも忘れ、スマートフォンを握り締めたまま、彼の反応を待った。
『わかった』
菖悟さんは静かにそれだけ口にすると、私に感情をぶつけることなく電話を切った。
呆気ない最後だった。
私は往来で、声を出さずに泣く。
泣く資格なんてないけれど、涙があとからあとから溢れ出て止まらなかった。
最初から何もかも、私は彼に相応しくなかった。私は彼の結婚式を担当するウエディングプランナーで、彼と川嶺さまを祝福する立場だったのだ。
だから、本来の姿に戻るだけだ。私はまたお客さまの幸せのために生きていく。
『俺の気持ちを知っていて、そう言うんだな?』
菖悟さんの声には怒気が孕んでいた。手のひらを返され、冷静さを失っているようだった。今朝までの関係はなんだったのかと、私を詰りたいはずだ。私が菖悟さんの立場だったら、きっと許せない。
けれどそれでよかった。私を恨んでほしかった。そのほうが、私は彼を諦められる。最後まで自分勝手でごめんなさい。菖悟さん、川嶺さまと幸せになってください。
「はい」
私ははっきりと頷いた。
重苦しい沈黙が流れる。私は息をするのも忘れ、スマートフォンを握り締めたまま、彼の反応を待った。
『わかった』
菖悟さんは静かにそれだけ口にすると、私に感情をぶつけることなく電話を切った。
呆気ない最後だった。
私は往来で、声を出さずに泣く。
泣く資格なんてないけれど、涙があとからあとから溢れ出て止まらなかった。