身代わり花嫁なのに、極上御曹司は求愛の手を緩めない
一時間後、新郎新婦を見送り、事務所に戻る。

そうして次のお客さまの資料をまとめているときだった。

「今井さん、川嶺さまからお電話なんだけど」

困惑した表情の先輩が、私に受話器を向けた。

私は頭の中が真っ白になる。

今度は一体私になんの用なのだろう。

菖悟さんの話なら聞きたくなかった。

『この間は取り乱してしまい、本当に申し訳ございませんでした』

電話を代わると、川嶺さまは開口一番私に詫びた。

「い、いいえ」

『昨日、菖悟さんから連絡があったんです。それで今夜、会うことになって……。お世話になった今井さんにはきちんと報告しておきたいって思ったんです』

「……」

うれしそうな川嶺さまに、私は何も言えなかった。

これでよかったと思うのに、どうしても言葉が出ない。

ほんの少し菖悟さんの話を聞いただけで、心を乱されている。

彼が彼女と会う決断をしたのなら、きっとふたりはよりを戻すのだろう。

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