身代わり花嫁なのに、極上御曹司は求愛の手を緩めない
「大丈夫よ。本物の沙絵さんじゃなくたって気づかれないわ。こちら側の親族は今日初めて花嫁を見るんだから」

「でも川嶺さま側にはばれますよ! 川嶺さまのお父さまはそんなの見過ごせませんよねっ?」

私は慌てて、川嶺さまのお父さまに同意を求めた。

けれど彼は眼差しに強い決意を滲ませ、私を見つめる。

「いいや、予定通りに結婚式を進めていただけるなら、こちらとしても願ってもない話です。今井さん、沙絵が見つかるまでのつなぎ……、どうかよろしく頼みます」

なんということだろう、川嶺さまのお父さまは高須賀さまのお母さまに賛同した。絶対許容できない提案だと思ったのに、それよりもここで破談にはしたくないという気概のほうが強いらしかった。

「たかが結婚式のために、親族や友人、会社関係者に二度も足を運んでいただくわけにはいかない。父さんもそれでいいだろ」

高須賀さまは自身のお父さまに最終判断を委ねた。

すると彼のお父さまは「そうだな」と短く頷き、当の私の拒否を無視したまま、両家の意見が一致する。
< 13 / 146 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop