身代わり花嫁なのに、極上御曹司は求愛の手を緩めない
私は思わず頭を低くし、メニュー表を広げでそこに顔を埋める。

「あの、北瀬マネージャー……」

「どうしたの? おどおどして」

挙動不審な私を、北瀬マネージャーは可笑しそうに眺めた。観葉植物にうまく遮られているのか、彼は未だ菖悟さんたちに気がついていないようだ。

どうしよう、とうろたえているうちにも、北瀬マネージャーはさくさくオーダーを始めてしまう。もう食べ終わるまでここから出られなくなってしまった。

「申し訳ないけど料理が来るまで、メールチェックさせてね」

北瀬マネージャーはタブレットを取り出した。

彼らとの対面を回避するにはどうすればいいのだろう。もう何も案が浮かばず私は途方に暮れた。

「菖悟さん、どのお料理もおいしかったですね」

するとそのとき、背後から川嶺さまの明るい声が聞こえた。どうやら彼らは食事を終えたところのようだ。

それならばこの気まずさもあと少しの辛抱だと、私は必死に耐えようとする。

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