身代わり花嫁なのに、極上御曹司は求愛の手を緩めない
私はうろたえ、これまで一言も発していない北瀬マネージャーに掴みかかった。

「北瀬マネージャー、何か言ってください!」

本来ならこういうとき、マネージャーは社員を庇ってくれる存在のはずなのに、なぜか彼は傍観しているだけだった。普段から何を考えているのかわからないタイプだけれど、顔がすこぶる整っている分、その動じなさがもの恐ろしい。

「そうだねえ……」とのんびり呟いてから、北瀬マネージャーは高須賀さまに気安い口調で訊く。

「高須賀はそれでいいんだね?」

「いいから言ってるんだろ」

ぶっきらぼうに答える高須賀さまに、私ははっとした。

そういえば高須賀さまと北瀬マネージャーは、学生時代からの友人だ。高須賀さまがマリヨンで結婚式をすることになったのもそれが理由だった。北瀬マネージャーは将来、マリヨンを始めとする、全国各地にある結婚式場のグループ企業を継ぐ御曹司なのだ。

……なんだかとても嫌な予感がした。
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