身代わり花嫁なのに、極上御曹司は求愛の手を緩めない
「そっか」

北瀬マネージャーは高須賀さまに笑顔を向けた。

そうして私に、軽やかな口調で告げてくる。

「じゃあ今井さん、急で申し訳ないけど、高須賀の花嫁になってもらえるかな」

「えぇっ⁉︎」

冗談ですよねっ? と、私は目を剥いて訴えた。

けれど北瀬マネージャーはそれを笑って受け流す。

「うん、そうだね。特別手当、弾むね」

「全然そうではありません!」

北瀬マネージャーは絶対わかっているのにとぼけたふりをしている。味方はひとりもいないのだと、私は愕然とした。

「でももう、決まっちゃったからね」

「……っ」

すでに諦観しきっている北瀬マネージャーに見切りをつけ、私は周囲を見渡した。
< 15 / 146 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop