身代わり花嫁なのに、極上御曹司は求愛の手を緩めない
すると確かに彼の言う通り、私が花嫁の代役をすると決定したような空気が漂っていてぎょっとする。

うそだ、本当にありえない。

けれどそこで、川嶺さまのお父さまが「なんとか破談にならずに済んだ……」と安堵の吐息を漏らした。

そのことに、私が拒めば直ちにこの結婚は流れてしまうのだと、改めて思い知らされる。もし川嶺さまが戻ってきても、そのときにはもう彼女の居場所はなくなっているのだ。

川嶺さまのためだ、と私は腹をくくった。

そう、たとえばマリヨンで月に一度行っているウエディングフェアで、花嫁役のモデルをすることになっただけだと思えばいい。これはただの模擬結婚式なのだ。神さまの前で、本当に愛を誓い合うわけじゃない。

こうして私は偽物の花嫁として、高須賀さまとバージンロードを歩くことになったのだった。
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