身代わり花嫁なのに、極上御曹司は求愛の手を緩めない
――ウエディングキスが終わると、アーチ型の大聖堂にパイプオルガンの清らかな音色と美しい聖歌が響き渡った。

祝福の曲に包まれ、私は高須賀さまと夫婦として結ばれた。もちろん偽りだから、胸中はいたたまれなさでいっぱいだ。

大きな拍手を浴びながら退場する。

本来ならこのあと、チャペル前のガーデンでフラワーシャワーとバルーンリリースの予定だったが、外は大雨だった。さらにゲストが自由に歩み寄れる場は、私の正体がばれて大ごとになる危険もあるので取りやめになる。

その時点でも、川嶺さまの行方は不明だった。

けれど三十分後には結婚披露宴が始まる。

さすがに披露宴まで偽物で進行するのは無理だった。それに私のほうも、ほかのお客さまとの打ち合わせが入っている。
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